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を左右する主な要因であると指摘してきたが、85年から90年代初めの出生率の著しい上昇はどのように分析されるのであろうか。Stenflo(1996)によれば、
●(両)親保険による育児休暇手当て金の給付レベル規則の改定(1986年、同じ手当金が給付される前提としての出産間隔が24か月から30か月に延長された)により、初子と第二子の出産間隔が短くなった。
●初子出産年齢の高齢化が停止し、しかも1960年生まれの女性に関しては出産年齢の幾分の低下(若齢化)がみられる。
●1950年代未に生まれた人たちの第三子出産率が増加した。50年代末に生まれた女性たちで子どものいない割合そのものも増加しているが、反面、第三子出産をする人が増えたため、女性一人当たりの平均子ども数は低下していない。
と指摘される。

 

女性の就労率は高くなったにもかかわらず、有給育児休暇制度や保育事業は60、70年代に比べるとさらに拡充され、しかも経済的に好況で生活が安定していたことも、子どもをもうけることにプラスの方向に影響したと思われる。低出生率をたどる他の国々と比較して、非常に高い出生率を実現したスウェーデンの動向はこれらの要因の「集約的な結果」として指摘されるものであろう。
1990年代以降の出生率の低下は、予期されていたものだということができる(Stenflo,1996)。なぜなら、二子間の出産間隔がさらに短くなり、出産年齢が低下して出生率がさらに上昇し続ける理由がどこにも見当らないからである。また、第三子出産率がさらに上昇することを期待するのも難しい。男女の考え方や行動パターンを根本的に変えるような変化がみられないことも、いろいろな調査によって明らかである。1992/93年に行なわれたインタビュー調査の結果をみると、スウェーデン人の理想の子ども数は依然として子ども2人である。
1990年代以降の出生率低下は、若い女性の出産年齢が著しく高齢化したため、予期していた以上の低下を招くことになったといえよう。そのうえ、第三子出産率の低下が1993年以降指摘される。現在の出生率低下に関して、さまざまな理論的説明が試みられてきたが、それらのほとんどが経済的不安に関連づけられるものである。失業、育児休暇手当金の切り下げなどもさることながら、現状の不安定からくる将来への不安が子どもをつくるかつくらないかの判断に影響を及ぼしたとみられるのであって、家族形成そのものに対する根本的な考え方や価値観が変わったわけではないことと一致するところである。
出生率の低下は当分さらに続くことが予想される。なぜなら、初子出産の高齢化が停止したという兆しはどこにもみられないからである。経済的な危機において、より一層の初子出産の延期が予想される。したがって、現在の状態に人々が慣れるまでこの傾向は続くものと考えられる。その結果、任意によるものではないが、必然的に結果として子どもが生めない(生むには年齢的に遅すぎる)女性の割合が増えることも予測される。しかし、現在のところ、子どもを生まない女性が減少する

 

 

 

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